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  1. 13.8.21 ねむれる森の美女ツアー

ねむれる森の美女ツアー

生で見る舞台は、映像の何倍もの力を持っていると私は思っています。映像作品には映りこまない、舞台が醸し出す雰囲気、ダンサーの空気感や息づかい、観衆との呼応…。これらは、踊り手の欠点を覆い隠して観衆を感動へと導くこともありますし、映像では完璧に見えるダンサーに足りないものを目立たせることもあります。

良きにせよ悪きにせよ、映像ではない舞台での踊りこそ、そのバレエ団・ダンサーの本当の姿。踊りをするものにとって、学ぶことがたくさんあります。地方ではなかなか生の舞台を目にする機会はないため、近くで公演がある時にはできる限りたくさんの生徒に観てもらおうと、スタジオで鑑賞ツアーを実施しています。

バスの中で予習

そして先日も、東京バレエ団の「こどものためのねむれる森の美女」を、生徒と保護者の皆さんで福岡まで観に行きました。50余名の方が参加されたので大型バスは満席。バスの中では、スタジオで作成した「鑑賞ツアーのしおり」でマイムや物語を予習したり、眠れる森の美女の絵本を読んだりしながら、ホールへと向かいました。

マイムの説明

無料パンフレット

ホールに到着してまず驚いたのは、パンフレットが無料で全員に配られたこと。きちんとしたパンフレットが無料で配られることは、バレエではとても珍しいことなのです。そしてその内容は、物語紹介はもちろん、配役紹介からマイムやバレエ用語の説明まである「バレエをはじめてみる子どものために」という意図がはっきりしたものでした。

無料パンフレット

言葉も上手く使って

舞台は式典長(カタラビュット)が、舞台上で語りながら物語を説明するというスタイル。「言葉がない」というバレエの取っつきにくさがないので、生の舞台を初めて見た未就学児も物語に引き込まれ、食い入るように見ていました。

舞台装置はシンプルなものでしたが、衣装は従来のバレエ団の衣装をさらにカラフルにしたものもあり、とてもメルヘンチック。また、2幕は大幅に省略されており、全体の長さは子どもも飽きずに見られる1時間半ほど。「こどものため」という一貫した姿勢が感じられました。

お客様を育む

バレエ界の長年の課題に、「踊るだけではダンサーの生活が成り立たない」ということがあります。これは「バレエ公演が収益事業として成功していない」とも言い換えられるかもしれません。欧米との文化土壌の差、公的支援の差はもちろんあると思いますが、もう一つ大きく違うのが観衆を育てる姿勢ではないでしょうか。東京バレエ団の今回の公演からは「観衆を育てる」という地道な姿勢をはっきりと感じ取ることができました。

長い旅公演のためか、東京バレエ団のダンサーには疲れも見えましたが、舞台を跳びだし、客席を回って握手をしてくれた彼らの姿は、子ども達の心に強く刻まれたと思います。

小さなバレエスタジオではありますが、私たちも東京バレエ団同様、お客様に寄り添い、バレエの魅力をたくさんの人に伝える姿勢を持ち続けていきたいと思います。

バスは満席
バスの中
ホールにて